ジョー・パス 『ヴァーチュオーゾ』
必ずそばにやって来てベロベロと顔をなめる「顔なめ」がいる。夏の間は
糠味噌の糠の入ったカメをなめる「糠なめ」だったんだけど、冬になったら
「顔なめ」になってしまったのは――そうです。こだまちゃんです。
できない!! これからはこだまのいないところを見計らってするしかない。
そういえば朝日の声欄にあった、主人のなきがらに寄り添って、起きろ起きろと
言わんばかりに真剣に顔をなめ、弔問客の涙を誘っていたというダックスフントの
話を思い出した。(すいませんが、私はまだ生きてるようで。)
話変わって、冬、寒くなって、あったかそうな陽だまりが恋しくなったときに聴きたくなる
アルバムがこれ。
ジョー・パスの『ヴァーチュオーゾ』。ポワロ役のデビッド・スーシェじゃありませんよ。
冬の寒い夜にあったかくして聴くのもいい。
このジャケットがなかなか印象的。写真が小さくて見づらいんだけど、実にいい
表情をしているし、構図もいい。写真がモノクロなので、オレンジと黄色の枠が
映えている。LPとCDの両方を持っているんだけど、LPのジャケットのほう
がずっといい。
録音は1973年の、なんと夏。ジャズのスタンダードをギターソロで聴かせる。
ヴァーチュオーゾとは技に秀でた人のことをさすらしい。似た言葉にアルチザンと
いうのがあって、こちらは職人技みたいなものをさしているらしく、微妙な違いが
あるようだ。
で、これはヴァーチュオーゾ。なんと言っても一番の魅力は技に支えられた
ギターの音。アンプを通さないアコースティックなジャズギターのもつ魅力が
十分に堪能できる。ギター1本で、よくこんなにスウィングするもんだ。
彼にはジャンゴ・ラインハルトに捧げたリーダー作もあるほどなんだけど、実はこの
ジョー・パス、ここに至るまでにはいろいろあったらしい。ライナーノーツによれば
20代の頃は麻薬でずいぶん苦労したようだ。そんなところは微塵も感じさせないが。
この休みに聴いてみるのはいかがでしょう。