ブラック・ホーク 1 : ジョン・ミラー
初めて聞いたのはブラック・ホークだった。
伝説のロック喫茶と言われてはいるが、コーヒーは苦いばかり、イスのすわり
心地も悪く、夏は音楽がやむと空調の大きな音が聞こえる店が、渋谷百軒店、
「ムルギーカレー」の2~3軒先に確かにあった。本当はいつも敷居が少し高い感じが
したんだけど、まあ、常連というほどではないにしろよく通っていた。
店内でかかっている曲のジャケットがレコード室(?)のところにいつも
店内でかかっている曲のジャケットがレコード室(?)のところにいつも
飾ってあった。そこで、ある日出合ったのが、ジョン・ミラーのこのアルバムだ。
タイトルは『Safe Sweet Home』(1976)。
いかにも輸入盤でございというような、金のかかってなさそうな茶色いジャケットには、
冴えない色つきメガネのおじさん。いったいいつの時代?と思わせるようなLPなんだけど、
聴いてみるとこれが懐かしくて優しい声で、選曲も『Blue Moon』『As Time Goes by』
といったスタンダードばかり。アメリカの20~50年代の曲が収められているんだ。
彼のギタースタイルはアコースティック・スウィングと呼ばれているフィンガー
ピッキング奏法で、実に高度なテクニックでギターを弾いているのに、聴いている
ほうにはまったくそれを感じさせない。軽くさりげなく聴こえてくる。おじさんと
書いたが、このときの彼はまだ20代だったかもしれない。
オレはこのレコードが欲しくてあちこち探し回ったあげく、原宿の『オーク』で
&アイリッシュフォークやブルースなどなど、かなりこだわりの品揃えの普通とは
少し違うレコード屋だった。実はこの店はブラック・ホーク経営者の松平さんの
店だったと思う。
このアルバムは時代を超えて聴くことのできる1枚だ。へこんだときや、
あったかいものが恋しいときに聴きたくなる。
ブラック・ホークはもうなくなり、経営者の松平さんも亡くなられたという話をwebで知った。
少しあったまった?