熊谷の奇跡
今聴いても『フィルモアの奇跡』は青い。ジャケットはまるで『青の時代』だ。
ロック思春期というか変革期というか、確かに時代も青かった。
マイク・ブルームフィールドがイケている。ジャケットのマイク・ブルームフィールドは
マイク・ブルームフィールドがイケている。ジャケットのマイク・ブルームフィールドは
クリント・イーストウッドの若い頃とどこか似ている気がする。この二人(マイクとアル・
クーパー)の雰囲気もどことなく怪しい。
たしか高校1年か2年のころだった。友人の谷君の家に行って、大学生のお兄さんが
持っていたLPを聴かせてもらったのだ。ジャケットの絵も、このとき焼きついて
いまだに忘れられない。マイク・ブルームフィールドのオープニングスピーチが終わって、
2曲目の「59番街の橋の歌(フィーリング・グルーヴィー)」の「ジャーン、チャッチャッ
チャッ……」ときて「スローォ、ダーゥン…」と始まるところなんざなんともええ感じ
なんや。アルのオルガン、マイクの泣きっぽいギター、こういうのがホンマに
カッコええと言うのんかいな!(興奮のあまり、急にエセ関西人入る)。
これがライブセッション盤との運命の出会い(大げさな!)だった。ストーンズ
などとは違うちょっとアブナいにおい。体験したことのない世界へ1歩足を踏み
入れてしまったという感じだった。
そのとき一緒に眺めたそのほかのLPのこともよく覚えている。アル・クーパーの
それに確かジャクソンファイブもあったよなあ、谷。
マイクはもういないけれどアル・クーパーはおととしも来日したらしい。
一部では根強いファンがいるようだ。新作『Black Coffee』のジャケ写真を
見るとちょっとじいさんぽくなってはいるけど、それなりにしたたかに
やっているような気がした。